それから準備も着々と進んでいき、
衣装作りに取り掛かっていたある日。

私が教室に忘れ物を取りに行こうとしていた時・・

「ねぇ、ねぇ咲野君。
咲野君もコスプレして、接客ね!」

あ・・

私の過去のことをばらした子だ・・。

その子が陽向に話しかけているのを私はちょうど見てしまった。

こんなとこ見たくない。

隠れてみるのが卑怯だってわかってるのに、動けない・・

本心では気になってるから・・

陽向がどんな反応をするのか。

「俺は、コスプレはしないよ。
・・っていうか、俺まだ君のこと許してないよ。」

「牧原さんと付き合ってるってホント?」

「うん。」

「何で、あの子なの?
親が一家心中してるんだよ?」

「そう思ってるうちは、一生花の魅力に気づけないよ。」

そう言って陽向はその場を離れた。

「ちょっと待って!」

その子が陽向の腕をつかんだ。

私は見られそうになって、柱の陰に隠れた。

「なに?」

陽向がこんなにも女の子に敵意を向けているのを初めて見た。