こうして始まったお疲れ様会は、しかし澤城くんの不在など、全く影響もなく、和やかで、賑やかな雰囲気に終始した。


また是非よろしくお願いします、お互いにそう挨拶しあって、2時間程の宴席が終わり、取引先のみなさんを見送ると、私と課長は2人になった。


「課長、今日は申し訳ありませんでした。」


すると私はいきなりこう言って、課長に頭を下げた。


「澤城くんが・・・あんなバカな態度とって、課長に恥をかかせてしまいました。本当にすみません。」


宴席の間、ずっと堪えていた情けなさと腹立たしさが爆発して、私は涙が溢れて来る。


「なんか、前にも同じようなことがあった気がするが・・・。石原が頭下げたり、泣くことじゃないだろう。」


「でも、私・・・。」


確かにその通りだ、そんなことはわかってる。だけど、私はとにかく悲しくて、悔しかった。


「少し歩くか。」


そんな私の肩を1つ叩くと、課長は歩き出した。私は涙を拭うと、慌てて課長の後を追う。


「なぁ石原、澤城をあそこまで人嫌いにさせた理由は何なんだろうな?」


「えっ?」


「アイツは人と必要以上に親しくなることを恐れ、拒んでいる。俺にはそうとしか見えない。人間大好きの俺には理解出来んよ。」


そう言いながら、首を振る課長。


「はい・・・。」


「昔からアイツを知ってる石原にもわからないんじゃ、俺にわかるはずもないか。可哀想だとは思うが、俺は所詮アイツの仕事上の上長に過ぎんから、どうしてやることも出来ん。それに・・・アイツの人嫌いに、今の俺は感謝しなきゃならんのかもしれねぇし。」


「えっ?」


その言葉の意味がわからず、私は驚いて課長の横顔を見た。