イベントを一緒に担当することになって、私は澤城くんと行動を共にすることが増えた。


取引先に一緒に行ったり、2人で打ち合わせをしたりする時間も出来たが、なぜか以前のように会話が弾まない。


私がコクって振られた後も、ずっと普通に話せてたはずなのに。もちろん業務上必要な会話は交わしてるけど、その他の、例えば移動中の時なんかでも、お互い押し黙ってる時間が増えている。


そんな状況を打開出来ないまま、時は過ぎ、イベント当日を迎えた。


1階にあるイベントスペースを借り切った私達は、声を出してお客様を呼び込んた。


当社製品なら、なんでも試食OKというのは、かなりのインパクトがあったらしく、予想以上の大盛況。


お陰でかなりの消費者の声が収集出来た。私は責任者として、全体に目を配らなければならなかったが、澤城くんは率先して、お客様の応対に当たり、話も聞いていた。


特に子供さんにニコニコしながら、話掛けているのを見た時、かつて幼い栞菜ちゃん達を連れて歩いていた頃の彼の姿を思い出してしまった。


途中から駆けつけて来た課長も大満足で、成功理に終わったイベントだったが、最後に問題が起きた。


片付けも済み、課長が私達や協力してくれた取引先のみなさんを労おうと誘ってくれたのに、澤城くんが得意の


「パス。」


を口にしたから、私は思わずカッとなってしまった。


「何言ってるの?私達は主催者側よ。いろいろ協力いただいたお取引先にお世話になりましたって、お礼を言う席に出ないなんて、ありえないでしょ!」


「そんなの、リーダーの石原さんや課長がいれば十分だろ。下っ端の俺の出る幕じゃない。だいたいそんな席、出たい奴だけが出て、楽しくやるのが本筋で、無理矢理参加させられるもんじゃないだろ。」


「本気で言ってるの?駄々っ子みたいなことばかり、言わないでよ!」


私が顔を真っ赤にして、澤城くんに詰め寄っていると


「石原、もういい。よせ。」


と課長が間に入ってくれた。


「じゃ失礼します。」


平然とそう言って、歩き出した澤城くんの後ろ姿を、私は睨むように見つめていた。頭に来てた、でもそれ以上に悲しかった。