「梓、熱弁だったね。」


私がデスクに戻ると、千尋がニヤニヤしながら話掛けて来た。


「梓もだいぶ小笠原教の信者になって来たみたいだね。」


「小笠原教?」


「なんかそんな感じじゃん。私達、課長に毎日洗脳されてるみたいで。でもあの人の言ってること、頷けることの方が圧倒的に多いからなぁ。」


「そうだね。」


「それに、澤城に対する梓の物言いがだいぶ冷たいと言うか厳しくなってるし。」


「えっ、そうかな・・・?」


自分ではそんな意識はまるでなかったから、私は驚く。


「今までは、なぜか梓は澤城にゾッコンだったから、見えてなかっただけで、課長に化けの皮剥がされたアイツを冷静に見られるようになれば、イライラして当然。」


「・・・。」


「あんな奴に振られて、梓は正解だったんだよ。」


この前は、美里にも似たようなことを言われた。言われてみれば、私、最近彼に冷たくしてたかもしれない。


彼の最近の仕事上でのもたつきぶりに、幻滅してるのは事実だし、しっかりしなよって思ってたのも確か・・・。


ふと彼の方に視線を向ければ、何か物思いにふけりながら、見覚えのあるカップで、コーヒーを飲んでいた。


(頑張ってね、澤城くん。イベント一緒に成功させよう。)


私は心の中で、そう呟いていた。