以来、美里が彼氏とのデートが優先となり、私と会う頻度が下がったのは、寂しいけど仕方ないこと。


今日の話題も、まずは美里の近況報告。付き合い始めて、そろそろ3ヵ月になるのに、未だに「先輩ー小川」と呼び合い、キスもまだだそうで


「とても27歳と25歳のカップルの付き合いじゃないよね。」


と苦笑いする美里だけど、大事にされて、真剣に付き合ってくれてるんだと、それはそれで満足している様子。


一方のこちらは、色っぽい話題はまるでなく、会社、仕事の話ばかりなのが悲しい。


「そっか、サワはそんなにしごかれてるんだ。」


「うん。大変だと思う。この間、彼の妹の栞菜ちゃんと電話で話したんだけど、家でもだいぶ元気がないみたい。励ましてあげるべきなのかもしれないけど、今はなまじの優しい言葉なんて、かえって澤城くんの為にならないような気がして。」


「うん。サワには試練だよね。アイツ、割と早く親を亡くしてるから、苦労してるんだけど、逆にそれで、世の中舐めてる部分もあるからね。梓もまぁ、惚れた弱みで、今までちょっとサワに優し過ぎたからさ。少しくらい突き放して、ちょうどいいんだよ。」


と言って、美里は笑う。


「まぁしごかれてるのは、澤城くんだけじゃないけどね。私も課長の言動で目から鱗がって思いをだいぶしてるし。なんか毎日が刺激的だよ。」


「へぇ。その課長が来た時は、大変な人が来ちゃったってグチメールが来てたけど、随分評価が変わったじゃない?」


「うん。なんか頼もしいというか、付いて行きたいって思える上司だよ、今は。」


そう言った私の顔を、少し見ていた美里は


「惚れたね、梓。」


と言うとイタズラっぽい表情を浮かべる。


「違う、そんなんじゃないって。」


私は慌てて頭を振るけど


「仕事が出来て、イケメンと来たら、女として惚れても不思議じゃないでしょ?それに自分を振った男を絞ってくれてるなんて、いよいよ頼もしいじゃん。」


「ちょっと美里!」


「梓ちゃんはいい加減、もうサワを離れて、自分の心の中に素直にならないと、ね。」


膨れる私に、美里はからかうように、でも真剣なアドバイスをくれたのだった。