コミュ障と自称しているくらいだから、自分が人と接触することが苦手で、好きじゃないことはわかっていたつもりだが、あそこまでダメダメだとは思ってもいなかった。


とにかく、最初はまともに名刺交換すら出来なかったのには、我ながら呆れた。


一緒に行ってくれた先輩達にも呆れられ、怒られ、フォローしてもらいながら、少しずつ成長してるとは思うが、これまでいかに自分が井の中の蛙で過ごして来たかを思い知らされる他はなかった。


帰り道、先輩に説教されたり、相性の悪い内田に「だからあんたは」と罵られるのも、それなりに凹んだけど、なにより堪えたのは、石原の冷たい視線だった。


このところ、石原の俺に対する態度が目に見えて冷たくなって来たと思うのは、たぶん気のせいじゃない。


もともと俺が彼女を振ってるんだから、仕方ないのだが、それにしても、あの時からじゃなく、最近になってというのは、やっぱり俺のダメダメぶりに呆れてるからだろう。


急速に自分に自信を失い、石原からの冷たい視線に、消えてしまいたいような気持ちになる一方、石原に尻尾を巻いてわずか半年やそこらで、会社から逃げ出す姿だけは見せたくなくて、俺は懸命に踏み止まっている。


「兄さん、今度梓ちゃんとショッピング行くんだ。栞菜ちゃんに似合いそうな洋服が売ってるお店があるからって、誘ってもらっちゃった。兄さんからもお礼、言っといて。」


人の気も知らないで、まぁ仕方ないけどな・・・妹の声に、俺はまたため息を吐いていた。