「はぁ・・・。」
「どうしたの?」
と問い掛けて来る栞菜。この日も仕事が終わり、自宅に戻ったのは、夜9時過ぎ。夕食を取りながら、深いため息をついた俺に、驚いたように声を掛けて来た。
「なんでもねぇよ。」
「そう、ならいいけど。」
そう言って、キッチンに立った妹。ゴチャゴチャと詮索して来ない優しさに俺は感謝していた。
課長が変わり、俺を取り巻く環境は明らかに変わった。
俺が当初配属された企画課ではなく、マーケティング課所属になったのは、俺のデータ分析能力を部長や前の課長が買ってくれたからだと思っていた。学生時代から取り組んで来たことだし、自信もあった。
事実、その面に関しては、諸先輩方に全く引けを取らなかったし、むしろ凌駕しているとすら思っていた。
ところが、今の小笠原課長は、俺にオフィスに閉じこもることを許さず、外回りを命じて来た。
人には向き不向きというものがある。そう内心で反発しながらも、業務命令に逆らうわけにもいかず、それまでほとんど活用することのなかった名刺を持って、動き始めた俺を待ち受けていたのは、使い物にならない不甲斐ない自分を直視させられる日々だった。
「どうしたの?」
と問い掛けて来る栞菜。この日も仕事が終わり、自宅に戻ったのは、夜9時過ぎ。夕食を取りながら、深いため息をついた俺に、驚いたように声を掛けて来た。
「なんでもねぇよ。」
「そう、ならいいけど。」
そう言って、キッチンに立った妹。ゴチャゴチャと詮索して来ない優しさに俺は感謝していた。
課長が変わり、俺を取り巻く環境は明らかに変わった。
俺が当初配属された企画課ではなく、マーケティング課所属になったのは、俺のデータ分析能力を部長や前の課長が買ってくれたからだと思っていた。学生時代から取り組んで来たことだし、自信もあった。
事実、その面に関しては、諸先輩方に全く引けを取らなかったし、むしろ凌駕しているとすら思っていた。
ところが、今の小笠原課長は、俺にオフィスに閉じこもることを許さず、外回りを命じて来た。
人には向き不向きというものがある。そう内心で反発しながらも、業務命令に逆らうわけにもいかず、それまでほとんど活用することのなかった名刺を持って、動き始めた俺を待ち受けていたのは、使い物にならない不甲斐ない自分を直視させられる日々だった。