「なんだ、どうしたんだ、急に?」


「いえ、今日澤城くんが来なかったもんで・・・。」


驚く課長に、私がこう答えると


「梓、なんであんたが・・・。」


「だって、私は彼の教育係だったんだもん。それに昔なじみだし。」


「ハハハ、変な理屈だな。内田の言う通り、石原が謝るのは、おかしいだろう。」


確かにそうだ。なんで急に澤城くんのことなんか言い出したのか、自分でもわからずに、私は下を向く。


「別に澤城が今日来る来ないは、アイツの自由。大事な用事があるのかもしれないし、ただ単にこういう場が面倒臭いのかもしれない。社会人としてはルーキーだが、アイツだって25年か?生きて来て、それなりの人生哲学もあるんだろう。それが仕事に支障をきたしたり、社会に反するようなことでもない限り、仕事上の上長でしかない俺は関知しないよ。」


「・・・。」


「まぁ人生の先輩として、ちょっと偉そうなことを言わせてもらえば、人と通り一遍の付き合いしかしない、出来ないっていうのは、人生でかなり損してるなぁ、とは思うけどな。」


「はい・・・。」


「まぁ、澤城には俺は興味を持ってる・・・って変な意味じゃないぞ。」


と私達を笑わせた後


「部下として、面白い存在だと思ってる。鍛え甲斐がありそうだなってな。」


そう言った課長は、自分の言葉に納得したように1つ頷いた。