「でもさ、イケメンとは限らないじゃない?独身でも彼女いるかもしれないし。」


「男は顔じゃないよ!」


「はい?」


「男は一に才能、二にハート、顔なんて、その次だよ。」


いつもはイケメン、イケメン騒いでるくせに、なんという手のひら返し・・・。私は唖然としながら、千尋の顔を見る。


「それに不倫はまずいけど、彼女がいるくらいで、諦めてなんていられませんよ。」


彼女がいるのに、他の女の人に言い寄られて、フラフラするような人に、ハートを求められるとは思えないけど。


それにその人の性格もあるし・・・とツッコミどころは尚もいっぱいあったけど、まだ見ぬ新課長に、最早アタックする気満々の千尋に、何を言っても無駄だと悟った私は、食後のコーヒーを黙って、口に運んだ。


その注目の人が、初めて私達の前に姿を現したのは、その2日後。


引き継ぎの為に来課した新課長は、ほとんど課長と行動を共にして、私達には簡単な挨拶をしただけだったけど、そのスラッとした長身、そしてイケメンとしか言いようのない整った顔立ちは、確かに目を引いた。


千尋や何人もの女子が目をハートにしてる中、正直私もちょっと見惚れてしまったのは、確かだった。


「石原はああいうのがタイプなんだ。」


すると突然聞こえて来た声。驚いて、その方を見ると、いつの間にか澤城くんが。


「えっ?そ、そういうわけじゃ・・・。」


つい、しどろもどろになってしまった私に


「俺とは月とスッポンなんだけど。ま、イケメンエリートに女が惚れるのは、仕方ねぇけどな。」


なぜか不機嫌そうな澤城くんが、仕事中にも関わらず、私を呼び捨てにしていた意味に、私は気づいていなかった。