「でも・・・サワ、翔真くんに彼女がいなかったのは、やっぱり私のせいだったのかな?」


「えっ?」 


「私達が彼を傷付けて、それで翔真くんは女子に対して不信感を持つようになっちゃって・・・。」


「美里・・・。」


伏し目がちに、そんなことを言い出した美里に


「その可能性は否定しねぇよ。」


と言った澤城くんに、私は一瞬息を呑む。


「だけど、俺と翔真がその手の話をしなかったのは、別にあの事がきっかけじゃなくて、ずっと。小川が翔真にちゃんと謝ったのも、俺はついこの間まで知らなかった。だから、これはあくまで俺の想像でしかないけど・・・。」


澤城くんは続ける。


「アイツがあの事で、傷付いてないわけない。まだ14歳だったんだからな。だけど、他の連中がアイツに謝ったのかどうかは知らないが、少なくともちゃんとケジメをつけた小川を偽りの笑顔で許したフリをするような奴じゃない。小川や石原や他の連中を一緒くたにして、だから女は・・・なんて考えるような奴じゃないよ、翔真は。」


「サワ・・・。」


「アイツに彼女が出来なかったのは、アイツに与えられた時間があまりにも短過ぎたから。小川のせいじゃねぇよ。」


そう悔しそうに言った澤城くんの姿を私達は、言葉もなく見つめていた。


だけど、そんな重い話ばかりをしていたわけじゃない。私達は2時間程、いろいろな話をして過ごしていたが、チラリと時計を見た美里が


「じゃ、私。これからちょっと用事があるから。」


「えっ?」


唐突な美里の言葉に私達は驚く。


「サワも梓も、今日はありがとう。私もこれでやっと気持ちのケジメが着いた。いくら想ってたって、もう翔真くんへの想いは絶対に叶うことはないんだもんね。だから、私も前を向いていくよ。」


「美里・・・。」


「お先にね。サワ、梓のこと、責任持って、ちゃんと送ってよ。今日、梓を誘ったのは、私じゃなくて、あんたなんだから。じゃ、またね。」


そう言い残すと、伝票を掴んで、美里は、あっけにとられる私達を残して、風のように立ち去って行った。