「済まない、ちょっと待っててくれないか。」


「どうしたの?」


「本当に偶然なんだけど、俺の大学時代の恩師の墓も、ここにあるんだ。ちょっとお参りして来る。」


澤城くんの手に、まだお花やお線香が残っている理由が、これでわかった。私達は、佐久間くんにお別れをすると、澤城くんの後を付いて行く。


着いたお墓は、まだ真新しいものだった。墓石に彫られている命日は、昨年の夏の日付だった。


澤城くんは、佐久間くんに対するのと、同じように長い祈りを捧げていた。その先生が、澤城くんにとっては、大切な人だったんだということが、よく伝わって来た。


「お待たせ。さぁ行こう。」


お参りが終わって、私達を振り返った澤城くんは、穏やかな表情で、そう言った。


ちょうど、お昼時になったので、私達はファミレスに移動した。


3人で食事をするのは、当然初めて。だけど、肩の凝らない場所だったこともあったからか、中学時代のことや佐久間くんの思い出なんかで、結構話は弾んだ。


「翔真くんって、彼女いなかったの?」


「ああ。前にも話したけど、高校入ってからの奴は前半はバイトとバイク免許の取得に夢中で、後半は受験勉強三昧だったからな。あんだけ熱中してた卓球をあっさり辞めちまったから、不思議に思って聞いてみたら、中学の時は、バイクのこと、まだ何も出来なかったからって。本当にバイクが好きだったんだよ、アイツ。」


「好きな子とかもいなかったの?」


「さぁ、どうなんだろうな?俺達、あんまりそういう話はしなかったから。ただ女子に興味がなかったわけじゃないだろ。じゃなきゃ、小川達のイタズラに引っかかっちゃいないだろうから。」


「お願いだから、もうその話は止めて。ホント、人生の汚点なんだから。」


そう言うと、美里は本当に辛そうに下を向いた。