翔真の墓までは、1時間くらいの道程。席の前と後ろで、話しにくいだろうに、石原と小川は、早速話に華を咲かせている。


もし、ここに翔真がいれば、二組のカップルでの楽しいダブルデートドライブになったのかな、なんてふと考えてしまう。


翔真と小川がカップルで、ということは俺は石原と・・・ということだよな。石原のこと、自分で振っておいて、俺なに妄想してるんだ・・・。


偶然だった。一昨日、仕事が終わって、帰ろうとした時、石原と内田の会話が耳に入って来た。


「梓の合コン嫌いは、わかってるんだけど、そこをなんとか。お願い!」


そう言って、手を合わせる内田と、困惑気味の石原。それを見た俺はとっさに言っていた。


「4日はダメだよな。」


その言葉が口に出て、俺は自分でビックリした。怪訝そうな石原と内田の顔が見えた時、俺は慌てて続けた。


「忘れちまったのかよ。4日はプチ同窓会やるって約束しただろ。」


まぁよくも、咄嗟にあんなデマカセが言えたもんだ。小川にせがまれて、翔真の墓参りに行く約束をしてたのは、本当だったが、石原を誘う予定はなかったから、当然何も言ってない。


果たしてキョトンとした表情の石原に、俺は続ける。


「小川から連絡行ってるだろ?」


そう言いながら、俺は懸命に内田に気が付かれないように目配せする。なんとか話を合わせてくれ、俺は必死に祈った。


その思いが、なんとか石原に通じたおかげで、今、俺達は、同じ車内にいる。


あの時の俺は一体何だったんだろう?改めて振り返ってみる。いや、振り返らなくてもわかってる。


あの時の俺は、石原を合コンなんかに絶対行かせたくなかったんだって・・・。


石原達の賑やかな会話に適当に相槌を打ちながら、俺はやがて、霊園の駐車場へ車を滑り込ませた。