澤城くんが去ったあと、千尋に疑惑に満ちた視線を向けられ、いたたまれなくなった私は


「本当にごめんね。じゃ、またGW明けに。」


と言って、もう一度、頭を下げると、私もそそくさとオフィスを後にした。


エレベーターを降り、エントランスを通って、外へ出ると


「余計なことしたか?」


と声を掛けられた。


「澤城くん。」


「石原が困ってたように見えたから。」


そう言って、微笑む澤城くんに少しドキドキしながら


「ううん。正直、迷ってたから。でも、合コンって性に合わないから、やっぱり助かったよ。ありがとう、澤城くん。」


って答える私。


「でも、プチ同窓会の話、まんざら嘘じゃないぜ。」


「えっ?」


「一昨日、小川と飲んだ。」


それは知ってる。その日、美里と澤城くんが中学校で待ち合わせて会うことは、事前に聞いていたし


『話が予想外に盛り上がっちゃって、澤城と2人で、飲んじゃった。ゴメンね。でも梓が心配するようなことは絶対ないからね。思ったよりいい奴だったけど、梓を裏切る価値は全くない(笑)。』


という美里らしい報告の電話が入って来たのは、夜の7時半くらいだった。


「それで、明後日、一緒に翔真の墓参りに行くことになった。」


「そうなんだ。」


「それで・・・よかったら石原も一緒にどうかなと思って。」


意外な澤城くんの言葉に、私は驚く。


澤城くんと佐久間くんの仲は当然知ってるし、美里が佐久間くんに想いを寄せていたことも知ってる。


でも、私は中1の時に、佐久間くんと一緒のクラスだっただけで、ほとんど話をしたこともなかった。


そんな私が一緒に行っても、かえって迷惑になってしまうのではと、とっさに考えてしまった。


「小川と2人じゃ、間が持たないんだよ。頼む。」


「えっ、でも一昨日は2人で飲みに行くくらい盛り上がったんでしょ?」


「だから、一昨日で話すネタが尽きたんだよ。小川だって、石原がいた方がいいだろうし。」


となぜか、一所懸命に誘ってくれる澤城くんの顔を見て、私は肯いた。


「わかった。2人のお邪魔じゃないんなら、喜んで。」


「変なこと言うなよ。俺達がそんな仲になり得ないことは、お前が一番良く知ってるだろ。」


「はい、はい。」


そう言うと、私達は笑い合った。