「結局、多数で押し切られて、よりによって私の名前で翔真くんを呼び出すことにされて・・・。あの時の翔真くんの悲しそうな顔、今だに忘れられない。後悔なんてもんじゃなかった、私はその日、あの子達とは縁を切った。」


「そうだったんだ。」


「それを梓に言ったら、喜んでくれてね。その後に、『私、実は、澤城くんに思い切って、想いを伝えようと思ってる』って相談されて、『是非そうしな。私は好きな人に告白する資格もなくなっちゃったけど、梓はきっと上手く行くから。応援するよ。』ってけしかけちゃって。自分ではあの仲間からは、もう抜けたつもりでいたし、まさか梓の行動が、仲間と取られるなんて、私も梓も想像もしてなかった。浅はかだった・・・。」


そんなボタンのかけ違いみたいなことだったんだ・・・。


俺達は複雑な思いに沈み、しばし沈黙する。その沈黙を破ったのは小川だった。


「実はね。翔真くんのお通夜、行かせてもらったんだ。」


「えっ?」


「中学時代のネットワークで、私達の耳にも入って、ビックリして。どうしても最後のお別れがしたくて、梓と2人でお焼香させてもらった。あんたが、親族席にいて、顔を上げられずに、泣きじゃくってたのも見たけど、とても声を掛けられなくて・・・黙って帰って来ちゃった。」


「そうか、お前と石原は来てくれてたのか。知らなかった・・・。」


俺は、ポツリとそうつぶやいたあと、続けた。


「大学入試が終わって、アイツは念願の単車を手に入れた。アイツ、卓球も好きだったけど、小さい頃からバイクに憧れてて。高校入って、すぐにバイト始めて、金貯めて。普通二輪の免許はとっとと取って、後は勉強して、キッチリ志望大学に合格して、すぐに250CCのバイクを買った。それをあんまリ嬉しそうに、俺に報告するから、『よかったな、じゃ是非見せてくれよ』って、つい言っちまったんだよ。」


「・・・。」


「放課後、家に飛んで帰って、バイクに跨ったアイツは、俺んちに来る途中、飛び出して来た3歳の女の子をとっさに避けようとして、転倒。ちょうど走って来た対向車に轢かれて・・・もし俺があんなことさえ言わなきゃ、翔真は死なずに済んだに違いない。そう思ったら、涙が止まらなかった。」


そう小川に言った俺の瞳に、今度は光るモノが。すると・・・。


「飲み行こうか?」


「えっ?」


驚くように、小川の顔を見た俺に


「中学校の校舎で言う話じゃないかな?でも私達、もう中学生じゃないし。この後、あんた、なんか予定ある?なければ、飲も?」


そう言って笑う、小川の顔は、凄く素敵に見えた。