今日会うのは「アズちゃん」じゃなくて、彼女の友達の小川美里だと言うと


「えっ、美里さん?」


とまたまた栞菜が食い付いてくる。どうやら、石原繋がりで、小川とも、仲良くしてもらってたようだ。


「美里さんによろしくね。」


という声に送られて、俺が家を出たのは、昼過ぎだった。


なんで石原は梓「ちゃん」なのに、小川は美里「さん」なんだというのは、どうでもいいツッコミだが、小川に指定された待ち合わせ場所に向かいながら、俺はさっきわかった、自分の頭越しに続いていた石原たちと弟妹との交流について、考えていた。


祭りの事件があったのが、小5の時で、俺達が引っ越したのが、高1の始めだったから、約5年。気が付かない俺もマヌケだったが、石原も明らかに、俺を避けて、2人に接触している・・・としか思えない。


石原と席が隣同士だった時も、その話は一切出なかった。隠していたと取る方が自然だろう。だが、なぜ・・・?その理由が全くわからない。


モヤモヤした気分を抱えながら、電車を降り、歩くこと10分程。見えて来たのは、懐かしい光景だった。


(変わってねぇなぁ。)


俺は思わず、駆け足になっていた。そこにあったのは、俺が3年間通った中学校。翔真とのたくさんの思い出が詰まった場所だった。


校門の前で、しばし感慨にふけっていた俺に


「澤城くん。」


と呼び掛ける声。振り向くと、そこに立ってたのは


「小川。」


待ち合わせたんだから、小川がいるのは、別に驚くことはないが


「なんだよ、その恰好。」


「失礼ね。小川美里は、元本校バトミントン部員なんですけど。」


そうだったっけ?