就職してから、なかなか本をゆっくり読む時間もなく、それがストレスになっていたのだが、GWは心ゆくまで、本が読めそう。


1人だから、夕飯も冷蔵庫にあるもので、適当に済ませ、読書に没頭していると、傍らの携帯が鳴り出した。


見ると登録のない番号からで、放置していると、やがて留守電に切り替わり


『突然にごめんなさい。中学の時、クラスメイトだった小川美里です・・・。』


って声が聞こえて来て、ビックリ。えっ、小川から・・・?戸惑いながらも、俺は急いで通話ボタンを押した。


「もしもし、小川?」


『あっ、澤城・・・くん。久しぶり、突然ごめんね。』


「いや、こっちこそ、スマン。知らない番号だったんで、放置しちゃってた。」


『ううん、それは仕方ないよ。』


「石原から聞いたのか?俺のケー番。」


『うん。』


「休み明けたら、アイツに文句言わないとな。個人情報の流出だって。」


俺の冗談に、小川は軽い笑い声を上げたが


『あんた、梓にそんな軽口叩ける立場なの?』


と口調を変えて、ツッコまれて、俺は一瞬固まる。


「石原には悪いことしたと思ってる。だけど・・・。」


そんな俺の言葉を遮るように


『あんたの分際で、梓を振るなんて、おこがましいにも程がある。ふざけるな、あんたを慕い続けた梓の10年を返せって言いたいよ。』


「・・・。」


『でも、それを言ってもしょうがない。人の心の事だもん。それを私がとやかくいうことじゃない。今日電話したのは、別にあんたに言いたいことがあったから。』


「小川・・・。」


『安心して。天地がひっくり返っても、私があんたにコクるなんてことはないから。立て続けに美女に迫られるほど、自分がモテるとうぬぼれてるわけでもないでしょ。』


わざわざ電話掛けて来て、コイツ喧嘩売ってるのかと思ったが、俺は正直、毒気に当たられた気分で、何も言えない。


『電話で話せることじゃないから、時間とってくれないかな。どうせ、GW中、家で本読んでるだけでしょ。』 


さんざんな言われ方をされた挙げ句、俺はなぜか、わかったと返事をしていた。