その日は、みんなに気を遣ってもらって、定時上がりさせてもらった。思ったより動けたけど、やっぱり疲れた。


家に帰り、寛いでいると、携帯が鳴る。ヒロくんだ。


「もしもし、お疲れ様。終わったの?」


『ああ。アズはもう家か?』


「うん。ご飯食べて、寛いでた。」


『お疲れ様、いきなり今日は忙しかったもんな。』


「結構ね、今まで迷惑掛けてたんだなぁって実感した。明日からまた頑張るよ。」
 

『気持ちはわかるけど、あんまり無理するなよ。』


「うん、ありがとう。」


今日はお互いに忙しかったから、なかなか話も出来なかった。それはそれで仕方のないことなんだけど、こうやって電話ででも話せるのは、やっぱり嬉しい。


『なぁ、アズ。』


「うん?」


『昼間は・・・ゴメン。』


「ヒロくん・・・。」


『内田の言う通りだよ。と言うか、自分でも本当はわかってた。アズを誘うべきなんだろうなって。でも・・・。』


ボソボソと呟くように言うヒロくんに


「面倒くさかったんでしょ?」


と私。


『いや、面倒くさかったわけじゃないぞ。それは誤解だ、ただ・・・。』


慌てた口調で答える彼に、今度は


「私と食堂に行くのが照れ臭かった、違う?」


と私が決めつけるように続けると


『ご明答・・・。』


とバツ悪そうに答えるヒロくん。


『すまん・・・。』


「そんなことだろうと思ってた。」


私は明るく言う。


「大丈夫、私は気にしてないよ。会社には、仕事に行ってるんだから、あんまりよそよそしくされるのは、もちろん嫌だけど、ベタベタし過ぎるのもね。」


『アズ・・・。』


「ちゃんと、こうやって電話くれたじゃない。ヒロくんはヒロくんらしく、私を見ててくれればいい。そういう人だって、わかってて好きになって、お付き合いしてるんだから。」