「そっか。実はさ、健吾がお前のこと『アズちゃん』って呼んでるの聞いて、結構衝撃的だったんだよ。アズって響きがいいなって。それが咄嗟に出たんだろうなぁ、あの時。」


やっぱり・・・呼び方も確かに大切だけど、今はそれより大切なことが。私が今、あなたに求めてる言葉は、もっとシンプルで、でもとっても大切な言葉で・・・私、一度、あなたに言ったことあるよね?


「とにかくオンリーワンってことだ。よかった・・・。」


いや、澤城くん・・・。


「だから、そう私を呼びたい理由はなんなの・・・?」


縋るような思いで、そう聞いた私の顔を見て、ハッとしたような表情になる澤城くん。


「そ、そうだよな・・・ゴメン、俺、肝心なこと言ってなかった・・・な。」


沈黙がまた訪れる、そして1つ深呼吸。澤城くんは、改めて私を見る。いよいよ・・・だよね。


「お前を『アズ』って呼ぶのは、世界中でただ1人、俺だけ。それは絶対に譲りたくない。だから、誰にも呼ばせないでくれ。理由はたった1つ。お前が、アズのことが・・・好きだから。」


顔を真っ赤にしながら、ついに私の言って欲しかった、聞きたかった言葉をくれた澤城くん。照れ臭そうに、はにかんでる彼を私はじっと見つめる。そして、私の瞳からは涙が一筋、また一筋・・・。


「アズ・・・。」


その涙に澤城くんは、少し困ったように、私の名前を呼ぶ。


「ありがとう、とっても嬉しい。でも、ね・・・。」


「えっ?」


「昼間、千尋が席を外してくれて、二人きりになった時、てっきり言ってくれるのかと期待しちゃって・・・正直落ち込んだよ。」


私がそう言うと


「さっきも言ったけど、病院は嫌だったんだよ。当たり前だけど、いい思い出ないし、さすがにお前にコクる覚悟は出来てたけど、コミュ障、ヘタれの俺としては、やっぱりシチュエーションの助けも欲しかったし。」


そう言って、すまなそうな表情になる澤城くん。


「でも、あんな雰囲気になっちまって、もう場所なんかにこだわってる場合じゃない。大切なのは、タイミングだなってようやく悟って・・・。慌ててケーキ作りに家に帰った。お前が落ち込んでるから、内田に残ってもらって。結局アイツ、夕飯終わるまで居てくれたんだろ?悪いことしたよ。」


千尋がさっきまで居てくれたのは、そういうことだったんだ・・・。