わざわざ会社の半休を取って、駆けつけてくれた美里に続いて、夜に掛けて、親戚や会社の同僚、学生時代の友人達が、何人も見舞いに来てくれた。


意識を失ってる間も、いろんな人が、入れ代わり立ち代わり来てくれてたそうで、私は感謝の思いでいっぱいだった。


だけど夕飯が済み、8時近くになると、さすがにお見舞い客もいなくなり、お母さんと美里だけになった。


「今日は結局、御三家は私だけか。」


「何、御三家って?」


急にそんなことを言い出した美里に、尋ねると


「梓のお見舞いの回数が多かったベスト3。私とサワと千尋のことでございます。」


と笑いながら答える美里。


「千尋・・・。」


その名前を聞いた私は、思わず複雑な声を出してしまう。


「御三家ほどじゃないけど、課長さんも何回も来てくれたよ。」


そんな私に気付かぬ風で、美里は続ける。


「そっか・・・会いたいな、2人に。」


ポツンとそう呟いた私に


「仕事が忙しいからって、さっき来てくれた後輩ちゃんが言ってたじゃん。サワも含めて、明日は来てくれるよ。」


と、美里は笑顔で答える。そんな美里に


「美里、今日はホントにありがとう。」


そうお礼を言うと


「いいんだよ。今日1日、梓とずっと一緒にいられて、本当に嬉しかった。梓と会って、いっぱいおしゃべりして、一緒に遊びに行って・・・子供の頃から、ずっとそうするのが当たり前で、それが出来なくなるなんて、考えたこともなかった。でも・・・実は当たり前でもなんでもなかったことを思い知らされた2ヶ月間だった。梓、私の家の近所に生まれてくれて、幼なじみになってくれてありがとう。」


「美里・・・。」


「そして、これからも・・・例え、お互い結婚とかして、家が遠くなっちゃったとしても、ずっとお婆ちゃんになるまで、親友でいよう。もうどこにも行くんじゃないよ、梓。」


と言って、私の手を取ってくれる美里。


「うん。私の方こそ、これからもよろしくね。」


ちょっと照れ臭かったけど、そんな約束を交わし合って、微笑む私達を、お母さんが、微笑ましそうに、見ていた。