病室に入ると、小川がベッドの横に座って、静かに石原の顔を見つめていたが、俺が入って来たのを見て


「サワ。」


と少し驚いたように声を掛けて来た。この間の俺の様子から、病院に来るとは思ってなかったのだろう。


「お疲れ。仕事、休んだのか?」


「ううん。私も今、来たところ。」


俺はベッドに近づくと、恐る恐る石原を見る。少なくとも顔や見える所に大きな傷はないようだった。傍目には、普通にただ静かに眠っている、そうとしか見えない。


「綺麗だね、梓は。」


「ああ。」


「もともと、美人だけど、こんな綺麗に見えたことない。」


「小川・・・。」


「目の前に横たわってるはずなのに・・・なんか凄く遠くに感じるのは、なんでなんだろ・・・。」


ポツンと呟いた小川の台詞に、俺は驚いて、彼女の顔を見る。すると、見る見るうちに涙を溢れ出させた小川は


「ねぇサワ。梓、助かるよね。ICUから一般病室に移ったんだもん。いい方向に向かってるんだよね!」


そう言って、俺を縋るように見る小川。


「当たり前だろ。もし、血迷って、石原がフラフラと向こうに行きかけたとしても、翔真が必ず追い返してくれるさ。」


咄嗟にそんなことを言ってしまう。そんな俺の陳腐な言葉に、小川は泣き笑いの顔で頷いた。


「ゴメン。私、何言ってんだろうね?ちょっと飲み物買って来る、何か飲む?」


「いや、大丈夫。」


「梓の親には、今休んでもらってるから。ちょっとお願いね。」


そう言って病室を出て行く小川、たぶん落ち着く為に、一回席を外したんだろう。


そして、俺は石原の横に腰掛けた。