病院に顔を出した小川から連絡が来たのは、俺が仕事から帰ってからすぐだった。


やはり、今日は容態に変化はなかったそうだ。が、ずっと石原に付き添っているご両親に疲労の色が濃くなり始めてると言う。


私が代わってあげたいけど、親族じゃないから、面会時間を過ぎれば、追い出されてしまう。おじさん達が心配だけど、どうしようもないと嘆く小川。


俺自身も何の役にも立たない自分に、腹がたって、地団駄踏みたいくらいの焦燥にかられる。


事態が動いたのは、翌日の夕方だった。課長のデスクの電話が鳴り、取った課長の口ぶりから、相手が石原のおふくろさんであることがわかると、オフィスには、いつもとは違う緊張感が走る。


課長は丁寧に応対していたが


「まずは何よりです。」


という言葉が課長の口から出て、思わず俺は、内田と顔を見合わせる。やがて課長が電話を切り、部長に報告する形で


「石原はとりあえず、生命の危機と言う意味では、峠を越え、先程一般の病室に移ったそうです。」


とみんなに伝えた。すると、一斉にホッとした空気が流れ、ヨシッとかよかったなんて声も聞こえる。


俺も内田と笑顔を交わしていたが


「澤城、内田。」


と課長から声がかかる。ちょっと外に、というゼスチャーをされて、俺達はまた不安な気持ちになりながら、席を立った。