「死神の親戚みたいな奴が、今の石原の側に居たら、どうなると思ってるんだ!」


堰を切ったように叫び出した俺に、周囲は息を呑む。


「人間、誰でもいつかは死ぬんだよ。だけどさ、それには、それなりの年齢ってもんが、あるだろうよ。俺の親父さぁ、死んだ時、まだ30代だったんだよ。」


「・・・。」


「親父が亡くなった後、女手1つで俺達三兄妹を育ててくれたおふくろも無理がたたって、50にも満たないで、逝っちまった。不在がちだった両親の代わりに、俺達を満腔の愛情で包んでくれた婆ちゃんも70まで生きられなかった。女性の平均寿命が90とか言ってる時代にだぞ。」


「兄さん・・・。」


「俺が生涯の師とまで尊敬していた教授が60の声を聞いてすぐ。挙げ句の果てに一生の親友だと思ってた翔真は18歳で死んだ。冗談じゃねぇよ。」


もう止まらない。


「その度に、病院に駆けつけてさ、死ぬな、死なないでくれって泣き叫んだって、誰一人、帰ってきちゃくれなかった。あぁ、そういうことなんだ。俺が本当に大切な人、愛する人は、みんなこうやって、足早に俺の周りから消えて行くんだ。俺はそういう星の下に生まれてるんだって。」


「・・・。」


「だからもうたくさんなんだ。翔真が死んだ時に、俺は誓った。もう俺には親友なんていらない。恋人なんて絶対作らない。俺にそう思われたら、その相手が不幸になる。大切な人を不幸にして、自分が悲しみ、苦しむなんて、もう本当にごめんなんだよ。お前ら、俺の言葉聞いて、何、訳わかんねぇこと言ってんだって、たぶん思ってるだろう。でも俺は本気なんだ、お前達に俺の気持ちはわかんねぇよ!」


「サワ・・・。」


「みんなに言われなくたってわかってる、俺は石原が好きだよ。そんなの、昔から自分でわかってる!だけど、俺は石原を死なせたくない。だから・・・病院にはもう行かない、行っちゃいけないんだ。ましてアイツにそんな思いを向けたら・・・。」


とうとう言っちまった、誰にも言わないでいた俺の思い。笑われても仕方がない、だけど俺は、真剣だった。