デジャヴ、という言葉がある。病院にいる間、俺はずっと、そんな感じだった。


今からもう8年近く前になる。親友の翔真が交通事故で亡くなった。あの時、自分があんなことを頼まなければと、さっきの内田のように、泣いて、翔真の家族に詫びたのは俺自身だったし、私が子供の手を離さなければと悔やんで泣いていた若い母親の姿が、お婆さんにオーバーラップした。


まるで再現フィルムのような光景、ただ1つの大きな違いは、翔真が病院に運ばれた時点で、もう手遅れだったのに対し、石原はそうではないことだ。


もっとも、容態は全く楽観視出来ないようだ。手術後に石原が運ばれたのは普通の病室ではなくICU。全身を強く打ち、頭部も打っている。意識を取り戻したとしても、何らかの障害が残る可能性は低くない。


小川が病院から知らせてくれた内容は、俺を凝然とさせた。


石原の笑顔がもう見られなくなってしまうかもしれない。石原が俺の前から消えてしまうかもしれないんだ。


そう考えると、俺はいても立ってもいられなくなる。だけど、今の俺に出来ることは何もない。


本当は、せめて病院で彼女に付き添ってやるべきなのかもしれない。しかし、あの場所にいると、嫌でもいろいろなことを思い出す。俺はやはり、あの場所に居たくなかったし、居るべきでもない。


俺は、まんじりとも出来ずに、夜を過ごした。