「どうしたんだよ?」


様子が急変した小川に、心配になって尋ねた俺に


「梓が・・・。」


と小声で呟くような小川。


「石原がどうかしたのか?」


「事故に・・・交通事故に遭って、病院に運ばれたって・・・。」


茫然自失、そう言葉を紡ぐのがやっとの小川を愕然と見る俺。


「な、なに言ってんだよ。お前、さっきまで石原と・・・。」


思わず先程の電話口での小川と同じようなことを言ってしまうと


「そうだよ、まだ別れてから、2時間も経ってないよ。だけど、さっきウチの親に梓の親から連絡があって、それで今・・・。」


小川もまだ信じられないと言った表情で言う。


「場所は?どこの病院なんだ?」


「今、親がメールで送ってくれる。」


「行くぞ!」


次の瞬間、俺は立ち上がった。


「あっ、お客様。」


間の悪いことに、そこにちょうど注文した品物が到着。


「すまねぇがキャンセルだ。あんた達の賄いにでもしてくれ。」


そう言うと、俺は脱兎の如く、外に飛び出す。少し遅れて出て来た小川に


「なに、グズグズしてるんだ!」


と怒鳴ってしまったが、小川は会計を済ませて出て来たから遅れたのであって、この時の俺は、そんなことには全く思いが及ばなくて、申し訳ないことをした。


車に乗り込み、小川から病院名を聞いて、カーナビをセットすると、直ちに出発する。


「急いで欲しいけど、安全運転でね。こっちまで事故起こしたら、シャレになんないよ。」


と小川が、俺を落ち着かせようと声を掛けてくるけど


「わかってる。」


とまたまた乱暴に答えてしまう俺。


(石原・・・。)


ハンドルを握る自分の手が、汗ばんで来てることに、全く気付いていない。不安と焦燥感だけが、俺の全身を包んでいた。