「内田って子は、なんであんたに課長とのことを言う必要があったと思う?」


「・・・。」


「内田さんは課長さんが好きで、でも課長さんは梓を見ている。友達の梓が課長と付き合うんなら、応援するしかないと彼女は諦めてたんだと思うよ。」


小川は語り続ける。


「だけど、いつまでも経っても梓は煮え切らないまま、時は過ぎて行く。そんな状況に耐えきれなくなった内田さんは、ついにイチかバチかモーション掛けたけど、うまく行かなかった。」


うまくいかなかった?・・・その小川の言葉に、ハッとする俺。


「だから彼女は、あんたをけしかける為に、課長と何かあったかのように告げた。あんたが怒って、課長に怒鳴り込むか、傷心の梓をほっとけなくなって、抱き締めにでも行くのを期待してね。じゃなきゃ、課長ともういい仲になったからって、梓に告げれば済むことで、あんたを巻き込む必要なんかないはずだもん。違う?」


そういうことになるのか、な・・・。


「確かに内田さんの言葉で、梓は課長とのデートをキャンセルした。2人の間に亀裂は入れられたけど、彼女の誤算は、サワが想像以上のヘタれで、梓への思いを抱えて、ただ悶々としてるだけで、結局なんのアクションも起こさなかったこと。課長は当然、梓を諦めないし、逆に自分が課長に不信感を抱かれただけの結果になりかねない。」


「・・・。」


「それは自業自得と言うしかないし、同情する気なんて、サラサラないけど。でもサワ、あんたは一体何考えてんの?」


「小川・・・。」


「梓が好きなくせに、2度も振って、なんでそこまで梓から逃げ回るの?」


「いや、1度目は、あの中2の時のこと言ってんだろうけど、あの状況で、告白されてるとか思えねぇだろう。」


「じゃ、2度目は?」


「石原への誤解を引き摺ってたこともあるし、俺みたいなコミュ障が、一般企業に入って、本当にやってけるのか、自信がなかった。それに・・・何より石原の横にいる自分が想像出来なかったんだ。」


その俺の言葉に、小川は驚いたように、こちらを見た。