「それで、今度はあんたのとこの、課長さんの話だよ。」


美里の話は続く。


「ラブホ行ったって、それだけでもうダメだよね。知ってる?浮気の調査でも温泉や普通のホテルやビジネスホテルに入っただけじゃ、証拠にならないんだけど、ラブホは入ったら即アウトなんだって。」


(えっ、美里、なんでそんなこと知ってるの・・・?)


私の内心の疑問なんて、当然スルーで、美里の話は続く。


「いくらなんでも、ラブホ入って、何もないって言われてもね・・・無理だよね、信じるの。」


「うん・・・。」


「でもさ、さっきの話じゃないけど、もし梓が本当にその課長さんのことが好きだったとしたら、信じられるのかもしれない。騙されたと思ってても、許せるのかもしれない。」


「・・・。」


「梓、これはあくまで、私の受けた感じ。それこそ、証拠なんか全くないんだけど・・・その課長さん、たぶん嘘ついてないと思うな。」


「美里・・・。」


「その人、かなり自信家だって言ってたよね。そして、かなりモテるって。だから女から誘われるなんて、別に珍しくないし、当たり前。でもプライドが高いから、自分のメガネに叶わない女になんか、目もくれない。それにちょっとレッドカード的な行動しても、俺が口説いてる女は俺を信じるに決まってる、そんなとこじゃないの?」


はぁ・・・。


「一方、あんたの友達は傷付いたろうね。やっとホテルに誘い込んだのに、手も出してもらえなかったんだもん。だからイチかバチか暴露作戦に出て、あんたと課長の間に亀裂を入れようとした。少なくともホテルに行ったのは嘘じゃないんだから。」


美里さん、彼氏出来るとそんなに洞察力、鋭くなるものなんですか・・・。私は、ちょっと呆気にとられて、美里を見る。


「もう一度言うけど、証拠はないよ。私の話をどう思うか、課長さんを信じるかは梓が決めること。だけど、今のあんたの顔、見てる限り、もう結論は動かないみたいだね。」


そう言うと美里は笑う。


「結局、振り出しに戻ったね、梓。」


「えっ?」


「いよいよ私の出番、アイツに恩返しする時が来たみたい。なにかと言えば、コミュ障だからって言って、逃げてるあの意気地なしのお尻蹴っ飛ばして、目を覚まさせてやる。」


と、なにやら張り切る美里を、私は不思議な思いで見ていた。