こうして、完全に友情が壊れてしまった私と千尋は冷戦状態に。


でも、わからないのは、小笠原さんの態度に一向に変化がないことだった。仕事の時はもちろん、昼食の時も


「どうした、内田とケンカでもしたのか?珍しいな。」


なんて呑気に言って来る。私は堪りかねて、この日は外出で、帰社予定のなかった彼と退社後、待ち合わせた。


「明日のデートを前にして、打ち合わせか?まぁ何にしても、梓の方から誘ってもらえるなんて、嬉しいな。」


なんて笑顔で言って来るから、私はつい、カッとなって言った。


「明日のデート、本当に行くつもりなんですか?」


「何言ってるんだよ、急に?」


「それで、私に対して、なんにも後ろめたさとか感じないんですか?いい加減にして下さい!」


その私の剣幕に、驚いたようにこちらを見ている小笠原さんに、私は昨夜、千尋がカミングアウトして来た内容をぶちまけた。


怒りを露わにした私の言葉に、小笠原さんの顔色がみるみる変わって行く。


「内田が・・・本当にそう言ったのか・・・?」


力なくそう言った小笠原さんに


「確かに、ちゃんとお返事しなかった私もいけなかったと思います。でも、いくらなんでも千尋と・・・私の一番仲のいい同期の子と、そんな風になるなんて、いくらなんでも酷すぎませんか?」


溢れて来る涙を拭うことも忘れて、私は抗議する。


「梓、待ってくれ。確かに、それが事実なら、俺はお前に何を言われても仕方がない。だけど・・・俺はお前に後ろめたいことは、何もしていない。内田とは・・・何もないんだ。」


それに対する予想もしなかった小笠原さんの言葉。私は一瞬、言葉を失った。