結局、私達は近くのカフェに入った。席につき、注文を終えるとすぐに千尋が口を開く。


「で、何が聞きたいわけ?」


まっすぐ私を見て、千尋は言う。そんな千尋に気圧されたように、私は一瞬口籠ってしまったけど


「昨日、課長と会ってたって、聞いたんだけど・・・。」


と遠慮がちに聞いた。


「うん、約束してたからね。いけない?」


と私を挑発するような口調で言う千尋。


「・・・。」


「梓が本当に聞きたいのは、昨日のことなんかじゃないでしょ?」


私が黙っていると、畳み掛けるように千尋は言葉を続ける。


「忘年会のあとのことも知ってるんでしょ?」


「うん・・・。」


「ホテル行ったよ。」 


あっさりとそう言った千尋の顔を、呆然と私は見つめる。


「私から誘った。課長に確認したら、梓とはまだ何もないし、カレカノでもないって聞いたから。」


「千尋・・・。」


何で、悪びれもせずに、そんなこと言えるの?私は千尋がわからなくて、ただ戸惑う。


「あんた、あざとい人だよね。」


「えっ?」


「本当は、課長のことなんか、何とも思ってないくせに、好きな男に振り向いてもらえないから、思わせぶりにキープしてるだけじゃない。」


「そんな・・・。」


「私はそんな梓が許せなかった。だから、自分の気持ち抑えて、もうあんた応援する必要ないって思ったから。これでも、あんたから課長を『奪った』ことになるのかな?」


「千尋、私達友達じゃなかったの?それなのに、こんなことするなんて・・・。」


ようやく反撃の言葉を口にした私に


「私は梓の課長に対する不誠実さが許せなかっただけ。だから悪いことをしたとも思ってないし、私、絶対に謝らないから。」


と言い放つ千尋。


「私は、私なりに小笠原さんのこと、ちゃんと考えてたよ。今度の週末にちゃんとお返事するつもりだった。」


「それはお気の毒様、でも課長ももう待てなかったんだよ。諦めなさいよ、もともと大して好きでもなかったんでしょ。」


「千尋!」


思わず大声を出してしまった。目からは涙が溢れてきて、私は千尋を睨む。でも、そんな私を千尋は冷たく見つめるだけだった。