翌朝、出勤して来た千尋が


「昨日はゴメン、着信気づかなくて。何だったの?」


と普通に聞いて来た。


「うん、聞きたいことがあって・・・。今日、仕事終わったら、ちょっといい?」


「わかった。」


私がこう言うと、千尋は頷いた。


そして、少し遅れて出勤して来た課長も、特に変わった様子はない。お昼もいつものように一緒に摂ったが、その時に、昨日は電話取れなくてゴメン。何だったと聞かれたが、いえ特になんでもありませんと誤魔化した。


今、ここで聞ける話じゃないし、小笠原さんがやっぱり、いつもの彼だったから、和美ちゃんの話が本当なのかなって気もしていたから。


だけど、仕事が終わり、一緒にオフィスを出ると、千尋の様子は変わっていた。


とりあえずカフェにでも入ろうかと誘うと


「そんな場所で出来る話なの?」


と一言。聞いたこともないような、千尋の冷たい口調に、私は息を呑む。


「梓がいいんなら、私は構わないけど。」


「・・・。」


「じゃ、行こうか。」


そう言うと、千尋は私に背を向けて、歩き出す。


(千尋・・・。)


そこにいるのは、私の知ってる千尋じゃなかった。私の緊張感は否応なしに高まって行く。