「俺がいつ、小川をないがしろに・・・。」


「あんた、小川と会った時に、優しい言葉掛けてるかよ?好きだって言ったことあるのかよ?態度で示したこと、あんのかよ?」


詰問されてた側がいきなりキレ出したから、先輩は唖然として、俺を見てる。


「小川は、そんなあんたの態度で、本当に自分がどう思われてるのかが不安で石原に相談したかったんだよ。だけど石原に会えなくて、たまたま出くわした俺に相談した、ただそれだけ。店出たら、駅までは一緒に帰ったけど、あとは右と左。そうだよな、小川。」


その言葉に、小川は頷く。


「なぁ、あんた、そのメール送って来た友達に、小川を直接紹介したのかよ?」


「いや、こないだ飲んだ時に、携帯に入ってた写真見せただけだ。」


「そうやって、俺の彼女、可愛いだろうって友達に自慢してんじゃん。その彼女が他の男と飲みに行ったと聞いて、いたたまれなくなるくらい心配して、嫉妬してるじゃんか。そんなに小川のことが好きなのに、なんでそれを肝心の小川本人に伝えてやらないんだよ。」


なんか止まんなくなって来た。先輩はもちろん、石原も小川もそんな俺を呆然といった感じで見てる。そんな周りに気が付いて、俺は急に頭に上ってた血が下がって、我に返った感じになった。


「すいません、先輩に偉そうな口きいちゃいました。失礼しました。それに小川と2人で飲みに行ったのは、確かに誤解されても仕方ないと思います。軽率でした、申し訳ありません。」


そう言うと俺は頭を下げる。


「先輩の友達も、俺達が店を出た後のことは見てないんでしょうから、その後、俺達がどうしたかを証明することは出来ません。あとは先輩が自分の好きな女を信じられるか、自分の小川に対する気持ちを信じられるか、それしかないでしょ。」


「・・・。」


「俺が言えることは、これだけです。あとは2人でもう1度、よく話して下さい。」


そう言うと、俺は会社の名刺を先輩に差し出した。


「それでも、まだ俺に話があるんだったら、連絡下さい。ケー番は小川が知っているはずですから。じゃ、失礼します。石原、行こう。」


「う、うん。あっ、失礼します。」


俺は先輩に頭を下げ、石原を促すと立ち上がった。


「サワ、梓、ありがとう。」


小川の言葉に笑顔で頷くと、俺達は店を出た。会計は・・・いいってさ。