沈黙が俺達を包む。やがて、小川が言った。


「ゴメンね、サワ。久しぶりに会って、突然こんなこと言われても迷惑だったよね。」


あぁ、小川を失望させちまった。俺になんか言って欲しかったに違いないのに・・・こんなヘタレに愚痴こぼした私がバカだったって、思わせちまった。使えねぇな、俺・・・。


「まだ時間大丈夫でしょ?飲み直そ。」


気を取り直したように明るく言う小川に


「小川。」


と、ようやく言葉を出せた俺。


「お前の彼氏、なんかお前に弱み握られてるのか?」


「はぁ?」


突然の俺の言い草に、小川は本当にキョトンって感じだったけど


「何、言ってんのよ。そんなわけないでしょ。」


と答える。


「じゃ、好きでもないお前と無理に付き合う必要ないだろう。大事に思ってるんだよ、小川のことを。」


「だとしても、限度ってもんがあるよ!」


「小川・・・。」


「大事にしてくれてるんだとしても、これじゃ興味がなくて、ほっとかれてるのと変わんないじゃん。違う?」


そう言って、まっすぐに俺を見つめる小川。その視線になぜか、俺はたじろぐ。


「お前の彼氏に会ったことも話したこともねぇから、わかんねぇけどさ。」


でもなんとか、立て直して、俺は言う。


「自信がねぇんじゃねぇの、ソイツ。」


「えっ?」


「お前のこと好きだし、絶対に誰にも渡したくないって思ってるんだよ。でも、その思いが、小川の為になるのか、小川を幸せに出来るのか、その自信が持てないんだよ、きっと。だから一歩を踏み出すのが怖い。まぁ一言で言やぁ、ヘタレなんだけど、なんか俺にはソイツの気持ちがわかる気がする。そんな男を女がどう思うかは、また別問題なんだろうけどな。」


「サワ・・・。」


自分でもビックリするような言葉が飛び出して来て、内心動揺している俺の前で、小川もまた、驚いたように言葉を失っていた。