だが、その笑顔はなにか寂しそうで。どうしたんだよ、その言葉が、喉まで出掛かるけど、やっぱり言えないヘタレな俺。


「ねぇ?」


すると、何やら上目遣いで小川が言って来る。


「サワは、私とこうして2人でいると、少しはドキドキしたりすんの?」


「えっ?」


突然、何を言い出したのか、俺が驚いていると


「私もさ、梓ほど可愛くはないけどさ、一応女子なんだよ。」


「わ、わかってるよ。」


「じゃ、どうなのよ?少しは男子として、私を意識したりしないの?」


コイツ、酔っ払っちまったのかと思ったけど、小川の表情は真剣そのもの。


「いや・・・正直、ドキドキはしねぇ、かな。」


やや躊躇いながら、でもそう答えちまうと


「そっか、やっぱりね。」


とあからさまに落胆する。


「いや、それはだな、そのお前とは、なんと言うか・・・。」


慌ててフォローしようとするけど


「いいんだよ、気を遣ってくれなくても。私に魅力がないってことなんだから。」


おい、それは違うぞ、別に俺が世界の男の価値観の基準じゃねぇし。だけど焦れば焦るほど、言葉が出て来ず、我ながら情けない。


「付き合ってさ、半年になるんだよ。でも何にもないんだよ、ホントに何にも。手繋いだこともないんだよ。今どき、高校生だって、そんなのあり得ないよ。その上、部員のなんとかさんの自主練に付き合ってやりたいからって、デートドタキャンされるし、クラスのなんとかくんがどこかで補導されたって、連絡が入れば、デートの途中で、そっちに行っちゃうし・・・。熱心な先生なんだと思うよ。でも、私ってなんなんだろうね?」


「・・・。」


「どうでもいいんだよね、あの人にとってはさ。だったら付き合わなきゃいいのにね。もともと私が惚れてアタックしたんだから、向こうはそれほどじゃなかったんだよ、きっと。だったら、そう言ってくれればいいのにね。」


そう言いながら、とうとう涙ぐむ小川。そうか、これを訴えたくて、石原を訪ねて来たのか。誰かに聞いて欲しくて、俺でもいいから捕まえたのか。でも参ったな、この手の話は一番ダメだぞ、俺・・・。


掛ける言葉が見つからず、ただ困惑している俺。情けねぇ・・・。