それから私達は、ディナーを楽しみ、結局8時過ぎに別れた。


「実はお前をサッカーに誘うのは迷った。でも誘ってよかったと思う。お前が喜びそうな所を一所懸命に探すのも、もちろん嫌じゃないけど、そろそろ今度ここに行かない?、ここに連れてってよって言う梓の言葉が聞きたいな。」


そう言って笑った小笠原さん。明日は日曜だし、さよならするのは、まだ早い気もしたけど、彼は多分猫をかぶったまま、帰って行った。


もうすぐ12月、街はクリスマスムードに溢れていた。寄り添い、腕を組み、手を繋いで歩いているカップル達、みんな幸せそうだ。


そんな周囲を羨ましげに見ている自分にフッと気付いた私は、我に返ると、小笠原さんに申し訳ない思いでいっぱいになった。 


さっきまで私は、彼と一緒にいた。私がもう一歩を踏み出せれば、彼は私の横に今も居てくれてるはず。なのに・・・。


なんで私、小笠原さんの胸に素直に飛び込んで行けないんだろう?なんて、自分でも理由、わかってるくせに・・・。


お前の心の中に澤城がいる、小笠原さんにそう言われて、私はそれを否定出来なかった。でも澤城くんが、私を振り向いてくれることは絶対にない。再会してから、今日までの時間がそれを証明している。


いよいよ恋人達の季節がやって来る。私は自分の気持ちを決めなくちゃいけない。もう曖昧でいるわけにはいかないんだ。


小笠原さんの為に、そして自分の為に・・・。