「ゴメンね。千尋が課長をターゲットにしようとしてたのは知ってたから・・・悪いとは思ってたんだよ。」


「私がショックを受けてるのは、そこじゃないの。」


私が謝ろうとするのを遮るように、千尋は言う。


「確かに私、課長が来る前はアタックする気マンマンだったよ。逆に梓は醒めてたけど。でも実際課長が来てみると、確かにイケメンだし、仕事はバリバリなんだけど、私は正直怖気づいちゃって行けなかった。まして、課長の方から口説いて来たんでしょ?」


「うん。」


「だったら、私が梓を妬んだり、逆に梓が私に負い目を感じるなんておかしいよ。」


「う、うん・・・。」


「私が、っていうかここにいるみんながショックというか、驚いてるのは、梓がそれを1ヶ月もの間、誰にも気付かせなかったことだよ。」


その千尋の言葉に、みんながウンウンと頷いてる。


「それって、そんなに驚き?」


「驚きだよ。梓はそんなことがあったら、モロバレしそうなタイプにしか見えなかったから。意外としたたかだったんだねぇ。」


「ちょっと千尋、したたかって止めてよ。そりゃ、別に悪いことしてたわけじゃないけど、やっぱり、大ぴらにするのも、良くないかなって思って、頑張ったんだから。それに・・・。」


「それに?」


「まだ課長・・・小笠原さんにちゃんと返事したわけじゃないんで。」


「えっ?」


「どういうこと?」


「うん、まだ自分の気持ちがはっきりしなくて・・・。」


「梓・・・。」


「小笠原さんは悪い人じゃないし、一緒にいてもとても楽しいんだけど・・・自分でもよく分からない。いい齢して恥ずかしいけど、男の人とこうやってお付き合い・・・みたいの初めてだから、慎重になっちゃってるのかな。」


そんな私の顔をポカンとした顔で、みんな見てる。きっと何贅沢言ってるんだって、呆れられてるのかな。


でも私はまだ、本当の小笠原さんを見せてもらってないみたいだし、仕方ない・・・よね。