出来ればもう少し残って仕事をしたかったのに、有無も言わさずに、オフィスから連れ出されてしまった私は、千尋や和美ちゃんといったウチの課の子達だけでなく、他課の同期生など総勢10名ほどに取り囲まれ、そのまま近くの居酒屋に連れて来られてしまった。


業務に支障が出るようなことはしない、小笠原さんは言ってたけど、確かに定時は過ぎたとは言え、こんな大勢で一斉に帰っちゃったら、充分、支障をきたしちゃってるんじゃないか、と心配になってしまう。


席について、飲み物を注文するのも、もどかしげに


「梓、どういうことなのよ?」


と勢い込んで聞いてくる千尋。みんなの視線が痛い。


「どういうことって言われても・・・まぁ課長と付き合ってるというか・・・。」


「いつから?」


「1ヶ月前くらいに、課長に、告白していただいて・・・。で、以来週末に3回ほどデートをしました。」


私がそう告げると、奇妙な沈黙が訪れる。


「えっ、みんなどうしたの?」


何の反応もなく、私は驚いて、みんなに言う。


「う〜ん、私達、どうやら梓を見くびってたね。」


「はい、驚きました。」


少しして、ポツンとつぶやくように言った千尋の言葉に、みんなが頷いてる。


「えっ、どういうこと?」


戸惑いながら、聞いてみると


「梓が私の目を盗んで、まさかよりにもよって課長とデキちゃうなんて・・・ショックだわ。」


と本当に落ち込む千尋。