「それはお前自身が1番良くわかってるはずだ。だが、理由はわからんが、お前は自分のその気持ちから、懸命に目を逸して来た。みんな、そんなお前に騙されて来たんだ。お前自身も含めてな。」


決めつけるように課長は言う。


「なんで、俺と梓が付き合っていることがわかった?」


「・・・。」


「お前、先週のうちから、気付いてたそうだな。他の連中が、梓とあんなに仲のいい内田ですら、全く想像すらしていなかったことに、お前は気付いた。どれだけ普段から、梓を見てるんだって話だろ。」


薄笑いを浮かべて課長は言う。俺は言葉を失う。


「かくして、お前は俺にとって、要注意人物ナンバーワンに赤丸急上昇でのし上がった。さっき部長に呼ばれて、公私混同は厳に慎めと釘を刺された。言われるまでもなく、そんな無様なことをするつもりはない。だが・・・お前だけは別だ。お前は絶対に叩き潰す、容赦はしない。なぁ、戦いに確実に勝つ方法を知ってるか?」


「・・・。」


「それは未然に敵を消滅させることだ。そうなれば、戦いすら起きない。それ以上に確実に勝つ方法があるか?」


「それは俺を会社から追い出すってことですか?」


「さぁな?まぁいろいろ手の打ちようはあるだろう。」


相変わらず、そう言って薄笑いを浮かべている課長に、さすがに俺も我慢の限界を超えた。


「あんた、意外とチキンなんだな。そんなんで、石原のハートを本当に掴めると思ってんのかよ?」


そう言い返したが


「俺とお前のどこをどう比べても、負ける要素なんかないと思ってるが、だが信じられないことに、現時点での梓の気持ちは、お前の方にある。これからアイツを容赦なく落として行くが、俺は負ける戦はしない主義なんだ。まして、今回は負けは絶対に許されないからな。打てる手は全て打つ。ま、覚悟しとくんだな。」


そう言うと、あっけにとられる俺を残して、課長は歩き出した。