昼休み終了間近、仲良さげに肩を並べて帰って来た課長と石原を迎えたオフィスは、なんとも言えない空気に包まれた。


いつからそういうことになったんですか、とツッコミたい空気、それっていきなりそんなにおおっぴらにして、まずくないんですかとたしなめたい空気が同居していたが、部長を始め、誰一人その件に触れる間もなく、午後の始業チャイムが鳴った。


オフィスの空気は一瞬にして、仕事モードに。そこらへんは、みんな大人だ。


3時休憩の際にも、特にその話題に触れる者はいなかったが、終業のチャイムが鳴り響いた途端、石原は内田達女子勢に取り囲まれると、そのまま連れ去られるように退社して行った。


やれやれみなさん、一斉に退社しちゃって、仕事に支障ないんですかと、呆れていると、部長が課長を呼び寄せてるのが目に入った。


若い独身の男女が、そういうことになるのは、ある意味自然なことだし、止められるものでもないが、社内風紀上、まして上司と部下の交際であるから、部長としてもある程度の事情聴取と釘刺しは必要と考えても不思議はない話だ。


オフィスに残っている連中もなんとなく、ヒソヒソと話してる中、俺は我関せずといった風情で、仕事を続けていると


「澤城。」


と俺を呼ぶ声。振り返ると部長との話が終わったのか、課長がこちらを見ている。


「帰らんのか?」


「まだ、少しやっていかないと。」


そう答えると


「そうか。スマンがちょっと時間をくれんか?」


「はい。」


そう答えた俺を促すと、課長はオフィスを出た。