「梓。」


そう呼び掛ける声が、耳に入った連中は、当の石原を含めて、みんな驚いたように、その声の方を振り向いた。


「昼飯行こう。」


しかし、呼び掛けた小笠原課長は、何事もなかったかのように、表情1つ変えずに言う。


「は、はい。」


戸惑いを隠せないまま、しかし拒むことはなく、石原は課長に付いて、オフィスを出て行く。


2人を見送る形になった一同は、彼らの姿が消えると一斉にざわめき出す。


「ねぇ、どういうことよ?あれ。」


いくらたまたま近くに居たからとは言え、相性の悪い俺に、そんなふうに話掛けて来た内田は、よっぽど驚いたんだろう。


「どういうことって、見ての通り、そういうことなんじゃないの。」


俺はそう答えると、いつものように1人で部屋を出た。


あのシーンは、相当インパクトをみんなに与えたようだったが、俺は今更、驚きはしなかった。ただ・・・動揺していた。


週明け、午前中が慌ただしく過ぎ、そして昼休み。いつものように、時が流れていたはずの月曜日だった。