久しぶりに石原と喋ったなぁ。このところ、なんか気まずかったから、俺達。


モタモタしてる俺を見て、石原は歯がゆく思ってたようだし、俺もそんな彼女に気後れしてっていうか、なんか話掛け辛くて、避けるような形になっていた。


だけど、今は彼女は何事もなかったように、普通に話掛けてくれた。笑顔で、でもちょっと釘を刺すことは忘れなかったけど。


仕事がうまく行かなくなって、でも俺にはそんな時に相談したり、愚痴ったり出来る相手がいないことに、今更ながら気付いた。


親父もお袋も、とうにいないし、俺を親代わりに暖かく見守ってくれた婆ちゃんもいない。翔真がいてくれたら、アイツの前で、恥も外聞もなく泣けたのかな?教授が生きてたら、いつものように、心に響くアドバイスをくれたのだろうか・・・。


なんで、みんな、あんなに急いでいなくなっちまったのかな?俺に泣く暇も与えてくれないくらいに・・・。


そして今、隣で屈託のない笑顔で、俺に話掛けてくれてる石原。


ひょっとしたら、今の俺にとって、そんな存在になり得るのは、この石原しかいないのかもしれない。だけど、無理。俺は石原に、自分の弱みなんか絶対に見せたくない。


自分が振った女に、そんなみっともない姿を見られるのが嫌だ、なんて下らないプライドなのかな?とにかく石原にだけは、弱い自分を見せたくない。もう十分駄目な姿、見られちゃってるくせにな・・・。


それに、まだ誰も気付いてないみたいだけど、俺は気付いてる。石原の身に重大な転機が訪れようとしていることに。


そして、そのことに今更動揺している俺って、何なんだろう、な・・・。