「難しい質問だな。」


「えっ?」


「よく芸能人なんかが、相手の方のどこに惹かれたのかとか聞かれてるけど、人を好きになるなんて、理屈じゃないからなぁ。」


そう言って笑う小笠原さん。でもその後、すぐに表情を引き締めると


「まぁハッキリ言わせてもらうと、俺にとって、石原の容姿も顔も声もみんな、どストライク。その時点でまず惚れるだろ?」


なんて真っ直ぐ言われて、私は恥ずかしくなって俯く。


「そして、そんなお前を見てると、あっ、こんな時にこんな仕草するんだ、こんなこと言うんだ、こんな表情するんだ。疲れたなって思った時にくれた笑顔、気遣い、優しさ・・・もちろん全部が全部俺に向けてくれてたわけじゃない。だけど、そう言った何気ないものが、1つまた1つ積み重なって行って、気が付けば、もう俺は完全にお前の虜になってた。」


その言葉に、私はハッとして、小笠原さんを見た。


「恋愛する気マンマンで、赴任して来たって前に言ったけど、それでも正直躊躇したんだ。やっぱり部下にそんな気持ち抱いたら、まずいだろって。相手は嫌でも断りにくいだろうし、断わられた後、気まずくなるだけならまだしも、それこそ仕事上での上司と部下の関係をキチンと維持出来るのか、個人的な感情で辛く当たるような真似は絶対にしない自信はあるのか、考えた。」


「・・・。」


「だけど、それで諦める、心の中だけにこの思いをしまっておく・・・その選択肢は結局、俺の中には残らなかったんだ。」


小笠原さんの視線は、ずっと私に向けられたまま。


「石原、もう一度言わせてもらう。俺はお前が好きだ。上司から突然こんなこと言われてビックリしたろう、戸惑ってると思う。だけど、俺は本気だから。だからお前も、時間がかかってもいい。いいから、そういうつもりで俺を見て欲しい。仕事場だけじゃなくて、一週間に一度、こんな風に会って、話をして、いろいろな所に一緒に行こう。そうして出したお前の結論を・・・俺は受け止めるから。それが俺にとって辛いものであったとしても。」


「はい・・・。」


熱くそう語ってくれた小笠原さんに、私はコクンと1つ頷いた。