お店を出て


「少し歩くか?」


と声を掛けられて、私達は歩き出す。明日は仕事はお休み。周りを見れば、私達のようなカップルが多く目に付く。あっ、私達はまだカップルとは言えないのかな・・・。


「今更こんなことを聞くのは、なんなんだが。」


少し歩いたところで、小笠原さんが私を見た。


「迷惑じゃなかったか?俺にこんなふうに誘われて。」


「えっ・・・?」


私は思わず立ち止まって、彼の顔を見つめてしまう。


「お前にしてみればさ・・・選択の余地がなかったよな。上司にコクられて、嫌だとすぐには断りにくいよな、普通。」


そんなことを言う小笠原さんは、とっても自信なさげで、いつもオフィスで見ている彼とは別人のようだった。


「そんなにつまらなそうにしてましたか?私。」


「いや、別にそんなわけじゃないけど・・・。」


私がそう答えると、小笠原さんは少し気まずそうに視線を逸らす。


「そう見えたのなら、ごめんなさい。正直、緊張してました。上司の方とこうやって一対一ということはもちろんですが、その・・・男の人とこんなふうにお話しするということに慣れてないというか・・・お恥ずかしい話なんですが、ほとんど初めてなんで・・・。」


「石原・・・。」


そんな私の告白に、小笠原さんは、驚いたような表情になる。


「ですけど、小笠原さんに気を遣っていただいて、いろんなお話をしていただいて、とっても楽しかったです。ありがとうございました。」


「そっか・・・なら、よかった。」


私の返事に、小笠原さんは本当にホッとしたように笑顔になった。


「小笠原さん。」


「うん?」


「私からも1つお聞きしてもいいですか?」


「うん。」


「小笠原さんのような、いかにもモテそうな方が・・・なんで私のような冴えない女を好きだと言ってくださったのか・・・不思議なんです。」


私のその言葉に、小笠原さんは改めて、私を見た。