結局、私は


「あまりにも突然のことで、心の整理が全然つきません。せっかく言っていただいて、申し訳ありませんが、しばらくお返事は待っていただけますか?」


と辛うじて言うと、そのまま逃げるように帰って来てしまった。


次の日、課長は普段通りだったけど、私は課長の顔を全く見られずにいた。それでもなんとか仕事はいつも通り、こなしてるつもりだったのだが、やはり挙動不審だったのだろう。


「ねぇ梓、何かあったの?なんか、様子が変だよ。」


と千尋に声を掛けられて


「ううん、何でもないよ。大丈夫、大丈夫。」


と慌てて笑顔を向けた。上司に告白されたことを社内の人間には、相談しにくかったし、まして課長はハッキリ言わなかったけど、「2人に絞った」のもう1人は間違いなく千尋のはず。


もともと課長にアタックする気満々だった千尋を差し置いて、私が告白されたなんて、なんか申し訳なくて、とても言えるものじゃなかった。


(どうしよう・・・。)


仕事の合間のブレイクタイム、私はどうしてもいろいろ考えてしまう。


ふと澤城くんの姿が目に入った。そう言えば、昨日あんな気まずい別れ方をして、今日は挨拶も交わしていないことに、気付く。


(澤城くん・・・。)


私が複雑な思いで、見つめているとも知らずに、彼もまたカップを片手に、なにやら物思いにふけっていた。