#05


「我がクラスは“大正浪漫”をコンセプトとした喫茶店をやりまーす」

 最初はしっくりこなかった。
 大正浪漫ってなに?……って。

 でも、沙羅が携帯で調べて――
「こんな感じ!」
 大正時代をモチーフにしたもので、和装したりするのだと教えてくれた。

「芳田くん、これ似合いそう」
「どれ?」

 芳田くんが、沙羅の携帯を受けとる。

「えっと、軍服」
「喜んでいいのかわかんねーな」

 絶対に似合う。間違いない。

「レイジが軍服着たらガチじゃん」
「どういう意味だよ沙羅」
「戦場にいそうな顔してる」
「ハイハイ。俺はイケメンじゃねーよ」
「えっ」

 わたしの声に、芳田くんと沙羅が同時にこっちを見る。

「どしたの、花」
「芳田くんは男前だよ」

 すると、和気藹々としていた空気が固まった。
 ……なんで?

「よかったね、レイジ」

 ニーッと笑い芳田くんを見る、沙羅。

「小糸井さんって」
「ん?」

 芳田くんが片手で口元を抑えている。

「……いや。つーか。俺も名前で呼んでいい?」
「うん」
「じゃあ。そうする」

 下の名前で呼ばれると。
 仲良くなれた気が、すごくする。

 だけど――……

『花』

 仁瀬くんに呼ばれるのは、苦手だ。

「わたしも名前で呼ぼうかな」
「どうぞ」
「玲二くん」
「っ、」

 呼んだのに目を逸らされた。

「ははーん」
 と、沙羅。
「花は、省エネから通常運転に切り替わったら。人たらしになるんだ?」
「なにそれ」
「将来が恐ろしいね〜? レイジ」
「俺にフるな」