“女の子”って扱いを受けるのは。
 正直、慣れていない。

 昔は男女一緒の列で並んだし。
 同じ教室で体操服に着替えていたのになあ。

 いつの間にか別の生き物みたいになった。

 見上げないと顔を見て話せないくらい高い背。
 無理しても出せないくらい、低い声。
 力持ちな腕。
 余計な脂肪のないカラダつき。

「芳田くんってスポーツしてる?」
「剣道部」

 ああ、それでか。
 長袖をめくった腕が意外に筋肉質だった。

「じゃあ、いつも持ってる長いのって」
「竹刀」

 汗水流して練習してるんだ。
 すごい、わたしには考えられない。

 防具かぶるよね?
 夏場とか絶対に尋常じゃなく暑いだろうな。

 どうしてみんな。
 そんなに、なにかに熱くなったり努力したりできるんだろう。

 手を伸ばしてまで手に入れたいものなんて。

 なんにもない。

「部活行かなくていいの?」
「遅れるって言ってあるから平気」
「そっか」

 はやく終わらないかな。
 これがなきゃ今ごろ帰りの電車の中だったのに。

 とはいえ、単純な作業の繰り返しは嫌いではない。
 頭を使わずに済むから。

「芳田くんって。カノジョいる?」
「……え?」
「あ、それか。すきなひと」
「なんでそんなこと聞くんだよ」
「気になったから」

 真面目そうな剣道少年の芳田くんも、沙羅のように、心の中では好きな子とデートしたいとか考えているのかの調査。