陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】


黎が呼びかけると、微かにその肩が揺れた。

「架くん……」

黎と私は急いでいた足を緩め、少しずつ距離を詰めた。

「……もしかして、兄貴が言った『総て』って、俺のことも入ってたの?」

架くんは私たちに背を向けたまま言って来た。

黎が誠さんに言った、『真紅には総て話してあります』という言葉。

黎がどう答えるのか心配になって隣を見上げた。

「……ああ。俺は、馨さんにも逢ったことがある。真紅には、そのことも美愛さんと誠さんのことも、話した」

包み隠さない黎。

架くんに話すつもりはないと言っていたけど、ことがあらわにされた今、黎は弟にそう接すると決めたようだ。

「じゃあさ……俺は、兄貴の――黎の弟じゃ、なかったんだね」