「あ、ありがとー」

姿を見せた黎に私がお礼を言うと、海雨ががしっと腕を摑んで来た。

口をあわあわさせている。

にっこり笑ってみせる。

「澪さんから逃げたら怒るって言ったよね?」

「~~~~」

海雨が泣きそうな顔をし出した。

海雨の手術の日から、海雨は澪さんとは逢っていない。

私は、澪さんのところへ乗り込んだ。

海雨の正体を知って、気持ちが覚めたり気が変わったりしていないか。

そう、問いかけた。

答えはあった。

そして今、澪さんが、少し躊躇う様な間があってから口を開いた。

「黎、お嬢さん、海雨ちゃんと二人で話させてもらっていい?」

「はい。廊下で待ってますね」

黎と二人、病室を出た。

「――で? 真紅はまだ反対してるのか?」