恐る恐る問うと、彼女はゆっくり肯いた。

『みんなは、別個人として転生を繰り返す呪詛の中に居る。わたしは、わたしのまま転生を繰り返して来た。今の名前は『梨実海雨』だけど、意識はずっとわたし――真紅たちが始祖当主と呼んだ者でしかないの。……今まで黙ってて、ずっと隠していて、ごめんなさい。……軽蔑、したよね………』

『ご当主様は――』

哀しみしか浮かべない彼女を遮って、私は口を開いた。

『ご当主様は、哀しみの中に、ずっとおられますか? 海雨は、私の親友は、いつも笑顔でした』

どれほど辛い時でも、痛みに囚われているときでも、海雨は笑顔を絶やさなかった。

その強さに、私は憧れていた。だから、

『ずっと笑顔だった海雨に、私は助けられていました。母と――家族と一緒にいられないときも、海雨の強さに引かれるように、私も笑顔でいることが出来ました』