「白桜様。お茶の替えをお持ちしました。入ってもよろしいですか?」
「あ――ああ。結蓮(ゆいれん)、手間をかけるな」
いいえ、と、襖を開けてやってきた少女は、柔らかく微笑んだ。
現在、月御門別邸には、俺と幼馴染の百合緋のほかに、三人の家人がいる。
三人とも御門一派の人間なのだが、霊力が弱かったりなかったりと、陰陽師としては生きにくい者たちだ。
他にもじい様が別邸に、とつけた家人もいたが、そちらは一人前に巣立ちしている。
結蓮たち三人は霊力が弱いことを蔑視されていたと知り、当主を祖父から継いだときに別邸に呼んだわけだ。
俺は当主であったじい様とともにそのほとんどを別邸で過ごしていて、京都の本邸に帰るのは大きな用事があったときくらいだ。



