私の要請に、黒ちゃんは細く息を吐いた。
「……わかった。澪、どこか人の入らない部屋を空けてもらえるか? 出来るだけオペ室に近い方がいい。澪はそのまま海雨の家族と待っていろ。真紅は黎が落ち着かせてるとでも言い訳しておけ。黎は俺たちと一緒に来い」
黒ちゃんの手早い指示に、澪さんが肯く。
「錠出来る部屋が近くにあります。そこへ」
促されて、澪さんに続く。
黎が、黙って私の方を見ないまま、手を握って来た。
それだけで、すとんと気持ちが落ち着いた。
今まで荒れまくっていた感情が、少しずつ普段の呼吸を取り戻していくようだ。
昨日、黎と言い合いになってから気分は落ち込んでいた。
海雨の連絡を受けて更に沈んでいた。
けれど、少し元気を取り戻した気がする。



