「そこまでにしてくれないか。梨実のことを友達として不安に思ってる真紅でもあるんだ。今の状況で追い詰めることを言わなくてもいいだろう」
私を黒ちゃんからかばうように、二人の間に身を置く黎。
私はその背中を見上げて泣きたくなった。
いつもそうやって、護ってくれる……。
「そもそもお前たち、話が飛躍し過ぎてないか? 過去のことは一族外の俺に言えたことはないかもしれないけど、梨実は生きてるんだぞ? 何故最悪のことばかり考える。真紅が梨実から妖異の残滓を祓うことも、まだ続けている途中だろ? なんで『今』を見ない」
はっと、私の肩が揺れた。
始祖の転生は、二度と泰山府君祭を行う者がいないよう監視するために転生を繰り返している。
その前提には、誰かが亡くなっていることになる。
今はまだ、そんな人はいない。
「――黒ちゃん。手伝ってほしいことがある」



